アルバイト2

コンビニのアルバイトをクビになって以降、しばらく単発の試験監督などをして繋いでいた。

 

大学1年生の春休み、東日本大震災が起こった。

授業開始が延期になり、自由な時間が増えたことにより、再び定期的なアルバイトを探すことにした。

 

・家の近所であること

・まったり続けられそうなこと

コンビニをクビになった経験がかなりトラウマになっていて、上記を条件に今度は落ち着いて働けそうな場所を探していた。

本当は本屋でアルバイトをしてみたかったが、残念ながら近所の本屋では募集をしていなかった。

近所の商店街を「バイト募集してないかな……」と自転車で見て回っていたとき、小さなドラッグストアの求人を発見して応募した。ありがたいことに即採用された。

そこは曜日固定ではなく自己申告制のシフトで、チェーン店ではあるが店舗面積が小さく、営業時間が21時までというところが気に入った。下町の商店街なのでお客さんは高齢者が多く、閉店前の1時間はほとんど誰も来ないということも多かった。(ちなみに1月2日にバイトに入った際には、開店後の2時間で3人しかお客さんが来なかった。納品もないのでずっと手持ち無沙汰ではたきがけをしていた。)

幸いにも優しい先輩たちに業務を教えてもらい、徐々に店に馴染んでいくことができた。

バイトに入る時間帯も自由だったので、土日や夕方は大学生同士で、平日午前中の授業前にはパートの主婦の方とシフトに入るなどいろいろな人と一緒に仕事をした。

 

ドラッグストアといっても、私のバイト先の店舗には薬剤師はいなかったため、ロキソニン等の第1類医薬品は取り扱っていなかった。

思い返すとトイレットペーパーとティッシュボックスとお茶とカップ麺とポテトチップスの品出しをしていたことばかりが浮かんでくる。

小さな店舗ゆえに品出しからレジ打ちまでを担うことになるが、慣れてくると自分の裁量で仕事の配分ができるのでかなりやりやすかったと思う。

暇なときにひとつずつ品物を前に出したり、賞味期限をチェックしたりといった地道な作業が好きだった。

 

このバイト先には忘れられない人がいる。

毎週日曜は店長が休みだったので、代わりにパートの登録販売者が責任者として出勤していた。

そのパートの登録販売者は50代の独身女性なのだが、変わった人だった。

日曜の開店時にバイトより遅く来たり(バイトは鍵を持っていないので店に入れず外で待っている)、出勤時から酒臭かったり、服が汚れていたりした。

しっかりしてくれよ……という思いを抱きつつ、この人がいないと店舗が成り立たないことも事実だったので、誰も強いことは言えなかったように思う。

実際、話してみると悪い人ではないのだが、社会人としてどうなんだ……ということはずっと感じていた。

逆に言えば、こういう人でも受け入れられている職場だったからこそ、要領が良いとは言えない私でも働き続けることができたのだと思う。

 

結局このバイトは卒業までの3年間続けて、入れ替わりで3人の店長にお世話になった。店長はみな優しかったので、大変感謝している。

私の卒業後2年ほどで、バイト先の店舗は潰れてしまった。

その後、バイト先のチェーンごと別の大手ドラッグストアに買収されてしまった。

当時の店長たちは、大手ドラッグストアの社員になられたのだろうか。どうか今もお元気で。