サイレンススズカと人生

コロナ禍の土日は朝から夕方までもっぱら競馬を見て過ごしている。

もともと競馬は好きだったが、他の趣味であるライブやイベントがコロナで中止になってしまったので、必然的に競馬に費やす時間が増えた。グリーンチャンネルにも契約した。いろいろなスポーツが中止になった時期でも中央競馬は一週も休むことなく無観客で継続してくれたので、競馬ファンとしてはありがたかった。デアリングタクトとコントレイルの二冠達成を現地で見られなかったのは残念だが。

 

私は基本的に追い込み馬が好きだ。

昨年の有馬記念で有終の美を飾ったリスグラシューの追い込みは忘れられない(馬券も当たったし)。

自分自身が何事もギリギリまでやる気が出ない追い込み型なので、追い込んで勝つ姿を見ると勇気づけられる。

逆に逃げ馬は、かっこいいけど儚さと表裏一体な感じがしてドキドキするのだが、その印象の元はやはりこの馬だと思う。

サイレンススズカ―無垢なる疾走 (ザ・マサダ競馬BOOKS)
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 「第五章 あの秋がなかったら」は題名からして涙なしには読めなかった。

 

「そう、サイレンススズカの大逃げこそ、人々がどうしても自らは歩くことのできない自由気ままな、奔放で、実に明るい人生のバーチャルリアリティーだったのではないだろうか。現実には実現不可能な憧れに近い人生を、サイレンススズカが大逃げを打つことで実感させてくれていたにちがいない。」

 

なるほどなと思った。

自分は追い込み馬に理想の人生を重ねて見ていたけど、最初から飛ばして逃げ切ることができればそれほど明るくて楽しい人生はないような気もする。

どちらにせよ人間の勝手な都合であることには間違いがないが、競走馬はそれくらい夢を見させてくれる存在だと思う。サイレンススズカはあまりにも遠くまで行ってしまったが……。

アエロリットが、リスグラシューと同じく引退レースだった昨年の有馬記念で、明らかに距離は長かったものの彼女らしく果敢に逃げたところでは感動した。

しんどいことの多い人生の中で、週末にはどんなレースを見られるだろうかというワクワクが自分の生きる糧になっている。

 

今週から秋競馬が始まった。地方やウインズでは少しずつ客入れを再開しているので、状況が改善されたらまた現地に見にいきたい。