アルバイト1

大学1年生のとき、初めてコンビニのアルバイトに挑戦した。

私の通っていた学部は昼夜開講制で午後からの授業が多かったので、午前の時間をアルバイトに充てようと思い、朝6-9時の枠を希望していた。

家の向かいのコンビニで募集していたアルバイトに応募し、無事に採用された。

 

最初の頃は、オーナーが私がW大学の学生ということに興味を持ってくれて、「ハンカチ王子には会ったことあるの?」などと話しかけてくれた。

大学名だけで過度に期待されていることに少々不安を感じつつも、がんばらなければという気持ちの元でせっせとメモを取って業務を覚えようとしていた。

 

しかし、私は失敗が多かった。

例えば、冷凍庫から出してレジ横の保温ケースに入れたばかりの肉まんを、すぐに売ってしまったことがあった。

あるときはおでんの鍋に入れる仕切りの向きを上下逆にしていて怒られた。

水を出しっぱなしにしたままおでんの鍋を洗っていたときもひどく怒られた。

ほかにもおそらく忘れているであろう失敗は枚挙にいとまがない。

失敗するたびに同じ失敗はするまいと決意して、実際しなかった気はするのだが、次々に新しい失敗をしでかすのでただ期待はずれな奴だったと思う。

ゆっくり考えれば普通にわかることなのに、瞬時に判断しようとすると間違えてしまうのである。

先輩の高校生がしっかり働いているのを見て、自分が情けなくてしかたなかった。

 

朝は急いでいるお客さんが多いから、最初は夕方の時間から研修をしましょう、と言われて2ヶ月くらい経ったと思う。夏の暑い時期にアルバイトを始め、肉まんやおでんの季節になってもなお、夕方に研修を続けていた。ときどきオーナーが肉まんを奢ってくれたりして嬉しかった。

シフトは1週間か2週間ごとに発表されるシステムだった。私はいつになったら朝の枠に入れてもらえるのだろうと思って、あるとき尋ねた。

「店長、私はいつから朝の時間帯に入れていただけそうですか?」

「あのねえ、申し訳ないんだけど、もう来なくていいから」

 

それが私のコンビニでのアルバイトの最後の日になった。

その場ではなんとか感情を制御できた。

退勤後、向かいの自宅マンションの駐車場に腰かけて、ひとりで泣いた。

 

それから大学在学中はなんとなく気まずくてそのコンビニに一度も入れなかった。

就職してから一度寄ってみたら、私がアルバイトしていた当時のバイトリーダーの人がまだレジに立っていた。もちろん私のことなんて覚えていないと思うが。

 

正直に言って私はコンビニのバイトを甘く見ていた。

実際はレジ、品出し、掃除、タバコ販売、宅急便、チケット発券、自賠責など業務の種類が多く覚えるのが大変である。今は電子マネーの種類も増えたからさらに大変かもしれない。

 

それにしてもアルバイトをクビになった話はあまりにも情けないので人にはほとんど話していない。